6月、7月の観望会は、チラシのようになります。日程表はこちらを参考にしてください。
ご案内用PDFファイル さて、6月、7月という初夏の星空を代表するものに「麦星」があります。 北斗七星の柄の部分の曲線をそのまま伸ばして、うしかい座のアークトゥール ス、おとめ座のスピカにいきわたります。「春の大曲線」と呼ばれるものです が、実は、この二つの一等星は、それぞれ「麦星」という呼び名を持ち、さらに ふたつは「夫婦星」とロマンチックな呼び名で呼ばれたりもします。さて、その こころは? ≪アークトゥールスが「麦星」と呼ばれるのはなぜ?≫ アークトゥールス。うしかい座の主星で-0.04等星。全天で4番目に明るく黄金 色に輝くその堂々とした姿は春から夏にかけての星空を席巻しています。語源は ギリシャ語で「熊の番人」という意味で、うしかい座はおおぐま座のあとを追い かけてまるで熊の番をしているようです。その一方で、日本では古来よりこの星 を「麦星」と呼んできました。 「麦秋」という言葉があります。麦が実る秋という意味ですが、麦が実るのは、 この時期、初夏です。収穫をむかえた麦が畑にたなびくその様子は、金色の世界 にも例えられ、このアークツゥールスの色と重なったのでしょう。麦の収穫をす る初夏に、麦を思わせるオレンジ色とも金色ともいえるこの星が、天頂近くに登 り広大な空に存在感を示している。古の人々の季節につちかわれた感性の表現に 感嘆します。刈り入れの終わった夕暮れに、疲れた腰をたたきながら背を伸ばし て天を仰いだ時にちょうど目に入ったのがこのアークトゥールスだったのでしょ う。 ≪次に、スピカがなぜ麦星なのか。≫ スピカ。おとめ座の主星で0.98等星。楚々とした純白の色をたたえ、和名は「真 珠星」。おとめ座は黄道12星座で誕生月星座のひとつなので、その乙女の姿を目 にすることも多いはず。あの乙女はいったい誰?これは、ギリシャ神話にでてく る農業の女神デーメテールとされます。左手に持っているのは麦の穂で、穀物の 女神デーメテールの象徴です。スピカはスパイクの語源と同義とされ、先のと がったものを意味します。麦の穂先と訳され、麦穂星と呼ばれたりもします。 スピカはこれまた、神話の世界からやってきた「麦星」だったのです。 なので、この二つの星は、いずれも麦がイメージされていて、私は勝手に、「麦 麦コンビ」などと呼んだりしています。 ≪このふたつの星は夫婦星≫ さて、地球などの惑星に対して恒星たちは動かない、と思われがちですが、実は 恒星たちも動いています。それを星の固有運動といいます。アークトゥールスは 固有運動のとても大きな星で、太陽系に対して秒速140kmでおとめ座の方向へ移 動していることがわかっています。その結果、およそ5万年もするとこの二つの 星は仲良く並ぶ、とされています。と言うことは、うしかい座とおとめ座が合体 してしまうことにもなり、新たな星座の枠組みができるのか、といらぬ思いも馳 せるのですが、その5万年後に晴れて夫婦星として並んで輝く、その姿を想像し て、この初夏の星空を眺めるのも一興ですね。 観望会へのお申込みはこちらからどうぞ。