全天で最も明るい恒星は、ご存じ、おおいぬ座のシリウス。(太陽を除いて、ということですが)
シリウスは、冬の大三角、冬のダイヤモンドを形作り、押しも押されぬ冬を代表する-1.5等星の横綱の恒星です。
では、シリウスの次に明るい恒星をご存じでしょうか。
それは、りゅうこつ座のカノープス。そんな星座ってあった?そんな星の名前聞いたことがない。と言われる方も
多いでしょう。まずは、馴染みのある星座、ない星座の話からはじめましょう。

≪星座の歴史≫
そもそも、星座の始まりは、紀元前3000年頃のメソポタミア文明にその起源を知ることができます。
さそり座やペガスス座といった馴染みのある星座が、バビロン近郊で発掘された粘土板集に見つけることができ、
すでに紀元前3000年のいにしえから、今の星座らしきものをうかがい知ることができます。
そうして生まれた星座の文化がギリシャへ渡り、ギリシャ文化と結合しました。そして、ギリシャ神話に登場する
神々や動物たちと結びついて、一つの星座の文化を形成しました。その集大成となったのが、紀元2世紀に
プトレマイオスが作成した「アルマゲスト」という書物で、これはその後も中世ヨーロッパに広く普及しました。
そしてその中にプトレマイオスの48星座とその物語が登場しています。48星座にはギリシャ神話とむすびついた
馴染み深いものが多くあります。
しかし、その後、15世紀に大航海時代となると、南半球から見える星座も加わり、さらに、星座の隙間を埋める
ように個人的な趣味や権威の象徴として思い思いに星座が作られるようになり、星座の世界は混乱をきたします。
そこで、1928年に国際天文学連合で全天88の星座とその境界線が定められました。どの星も、唯一無二の
どこかの星座に属するように星座の世界が整理されたのです。
そのときに、従来あったプトレマイオスの48星座は、そのまま引き継がれたのですが、その中で、一つアルゴ座は、
その大きさが大きすぎるという事で、4つの新しい星座に分解されました。それが、とも座、ほ座、りゅうこつ座、
らしんばん座の4つです。だから、りゅうこつ座はちょっと馴染みがないのですね。そのりゅうこうつ座のα星が
全天で二番目の明るさを誇るカノープスです。

≪南の空を超低空飛行するカノープス≫
それなのに、多くの人は、その名前に馴染みがありません。
それはこの星が、かなり南の空の星で、日本では南の空ぎりぎりにしか現れない、大変見ることのむずかしい星
だからでしょう。この星をみることができるのは、北限は北緯37.18度。東北以北ではみることができません。
カノープスの南中高度は、那覇11.7度で、大気による浮き上がりを考慮しても、名古屋で3度、東京で2度です。
ここで、1度と言うのは、腕を伸ばして小指の先の太さが1度です。3度は小指の先3つ分ということになり、
南の地平線がひらけたところでさへ、大変みることが難しい星ということになります。
また、この星は、見られる時間は計算上は3時間程で、現実的には2時間程度でしょう。
また、シリウスに次ぐ2番目に明るい星(-0.7等星)で、色もシリウスと似た青白い色のようですが、それは
南天で見たときの話で、日本でみる場合は、長い距離大気をくぐりぬけるため、色は赤みをおび、暗くなり、
都市部では双眼鏡でもないと見つけにくいかもしれません。。

≪見ると幸せになれる星という言い伝え≫
このカノープス。日本では少ししか空に現れないので、「横着星」「無精星」などと呼ばれたりしました。
中国では、地平線すれすれにほんの短い時間現れるこの星を「南極老人星」と呼んで、この星が地平線上に
明るく見えたときは、天下泰平、国家安泰の印としてよろこばれたといいます。また、赤味をおびた色から、
七福神のひとり寿老人と見立てられ、この星を拝むことが出来たら長生きできるとされた、そんなとてもありがたい
星なのです。

≪そんなカノープスはいつ頃、どうやって見ることができる?≫
さて、そんなありがたい星を見ることにチャレンジしましょう。
この星を見ることができる時間帯は、次のようになります。設定の場所は名古屋です。
********************出現時間   南中(一番高くなること)  沈む時間****************
12月20日     22:23       0:20         2:14
12月31日      21:44                        23:37                                   1:35
2024/1/10                21:04                       22:58                                   0:55
1月31日                      19:42                       21:35                                  23:29
おわかりいただけるように、そう、この星はまさに一年が終わろうとする時間に、南の空に南中するのです。
ですから、近年、私は、除夜の鐘の鳴る時間に、この星をみるべく、南の空をながめることを、年の瀬の恒例行事
としています。さあ、今年のおおみそか、除夜の鐘が鳴る頃、南の低空にこの星を見つけて、長寿と国家安泰を
願うことをマイブームとしてみてはいかがでしょう。

さて、カノープスの具体的な位置関係は、というと、まず、冬の夜半上記の時間頃、南の空に注目します。
そこには、シリウスとオリオン座が見えているはず。オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス
こいぬ座のプロキオンで形作る「冬の大三角」は確認できたでしょうか。
シリウスから地平線に視線をおとしたところよりも、やや、西側、 あるいはおおいぬ座の犬の前足の先の星は
おおいぬ座のβ星でミルザムという名前の2等星ですが、この星のちょうど真下ぐらいに位置しています。
高さは小指の先3個分の高さです。さあ、見ることができるでしょうか。

除夜の鳴る頃、この星をのぞめたら、きっと新しい年は希望に満ちた良き年となるでしょう。