Photo by Asada

日本では3年ぶりとなる今回の皆既月食は、欠け始め真夜中の1時半から欠け終わり早朝5時と、深夜の長丁場の時間帯となった。
この3時間半という時間でどのように観望に臨むかを悩みつつ、この深夜に臨みました。

さて、その前夜、9/7には、通常通りの観望会。
8時にいつもの屋上へ向かうと、煌々とまさに煌々と輝く満月がそこにあった。
すでに結構な高さにも昇っていて、8時なんだから当然そういう事なのだが、あまりの明るさに度肝を抜かれた。
という事は、それだけ雲のない快晴の天気だという事でもあり、喜ばしいことだ。
星なんて、この明るすぎて白々とした空に、ほとんど見えないではないか。足元を見ると、自身の影が鮮明に写っている。

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あまりに空が明るくて、星は夏の大三角とさそり座のアンタレス、土星、そして北斗七星みえた程度。
そして、観望会に参加した人へこれから始まる皆既月食の説明をする。

今夜の宿泊客には、月食のことを知ってそれを見ようと意気込んでいらした方も、
ご存じなく、たまたま、月食の夜にあたった人もいらした。
2時頃からつめていますから、皆さん、よろしかったら、月食を見に来てくださいね。と声を掛けた。
結果的には、全員の方が夜中の月食を見にいらした。
そして、望遠鏡の接眼レンズにスマホをあてて撮影するコリメート法で、皆さん、写真に挑戦。
結構うまいこと撮れたようでよかった。

しかし、この真夜中の皆既月食は、なんとも神秘的で、この世のものと思えない世界を見ている気分だった。
ふだんでも、月の煌々と輝く姿には、時としてその怪しさに魅入られる。
そして、皆既月食の時の月。さらに怪しげな様子に魅入られる。次第次第に欠けていき、暗くなり、皆既の頃には、
怪しげな色に染まる月。ふだん見ることのない神秘の姿に息を呑む。私は、今、どこにいるのだろう。地球ではなくて、
見知らぬ星に降り立ったか?

この夜、勿論、主役はこの月だが、夜中に星空を見上げた人を感動させるものは、もう一つあった。
東から昇ってくる冬の星座たちである。8時の観望会の時とは、まるで違う。月が暗くなっているから明るさに邪魔されることはない。
オリオン座のベテルギウスが、おうし座のアルデバランが、ぎゃしゃ座のカペラが、豪華絢爛な冬の星座たちが、
まるで、私たちにも注目して、と主張しているようだった。

そう、この真夜中の時間、西には、皆既月食の怪しげな月が、東には、冬のダイヤモンドが存在していた。
なんという豪華さ、なんという贅沢さ。

ただただ、空に見とれて時間を過ごしていると、月食の月は、ほとんど光を取り戻した姿となり、西の山の端へ最後の明るさを
主張して沈んで行った。
月食の夜は終わった。そして、辺りはなんとなく白み始め、星も見えなくなってきた。
しかし、そんな中でも、「私たちは別格だよ」と言わんばかりに、木星と金星が東の空で気をはいていた。

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