今年最大の天文イベントは、なんといっても2025年9月8日未明に見られる皆既月食です!

皆既月食と聞いて、多くの方が思い出すのは3年前、2022年11月8日に日本全国を熱狂させたあの夜ではないでしょうか。
あの時は天候にも恵まれ、しかも19:16〜20:42というゴールデンタイムだったため、日本中が一体となって夜空を見上げました。

今回の皆既月食は、日付が変わった深夜2:30から3:53にかけての時間帯です。そのため、観測には少し努力が必要になるかも
しれません。しかし、静まり返った闇の中で月食を観察する体験は、より深く集中でき、天文現象をじっくりと味わう醍醐味を
感じられるはずです。

≪皆既月食のメカニズムをおさらい!≫

さて、皆既月食とは一体どのような現象なのでしょうか?日食と合わせて、その仕組みを改めて確認しておきましょう。

私たちにとって身近な天体である太陽、月、地球。この3つの天体が一直線に並ぶ瞬間に起こるのが、月食や日食です。
・日食:太陽 → 月 → 地球 の順に並ぶ
・月食:太陽 → 地球 → 月 の順に並ぶ

もし、地球と月の公転軌道が同じ平面上にあれば、満月のたびに月食が、新月のたびに日食が見られることになり、
これほど注目されることはなかったでしょう。しかし、地球の公転軌道と月の公転軌道は約5度傾いています。
この傾きがあるため、月が地球の影に入ることは稀で、だからこそ月食や日食は、貴重な天文現象として注目されるのです。 

≪今年は「あたり年」! 日本では半年ごとに皆既月食が見られるチャンス!≫

とはいうものの、月食は地球規模で見ると、ほぼ半年ごとに起こる現象です。しかし、日本で見られるかとなると、
その機会は限られます。
2025年は、3月14日と9月8日に月食が起こります。3月14日の皆既月食はすでに終わっていますが、日本の一部で
部分月食が見られた程度だったため、大きな盛り上がりにはなりませんでした。
しかし、9月8日の皆既月食は、日本中で見られる皆既月食です! さらに、半年後の2026年3月3日にも、再び日本で
皆既月食が見られます。今年はまさに月食の「あたり年」と言えるでしょう!

9月8日の月食の具体的な時間帯は、残念ながら夜中から早朝にかけてとなります。詳細は下の図でご確認ください。
なお、図は東京での高度と時間が示されています。皆既の始まりや終わりは日本全国同じ時刻に起こります。
しかし、その時々の月の高度が地域によって異なります。
月食は、地球の影に月が入る現象で、そして地球の影は一つです。月が影に入るタイミングは、地球上、どの場所でも同じになります。
したがって、月食の各時間は日本全国共通(というか世界共通)です。
さて、月の高度は観測地の緯度や経度によって変わります。北へ行くほど、高度は高くなります。下図より、皆既となるときの高度は
東京で31度ほどですが、名古屋では33度ほどとなります。伊良湖でも、31度ほどでしょう。

≪ なぜ皆既中の月は「ブラッドムーン」と呼ばれるのか? ≫

写真は、3年前の2022年11月8日の月食の様子です。

皆既月食と皆既中の月による天王星掩蔽
皆既月食と皆既中の月による天王星掩蔽

「月が地球の影に入って、見えなくなる現象ではなかったの?」 「暗いとはいえ、どうして月の姿が見えるの?」
と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。

 

地球の周りには大気があります。太陽光が大気を通過する際、波長の短い青い光は空気の分子によって散乱され、
大気をほとんど通過できません。一方、波長の長い赤い光は散乱されにくく、光はなんとか大気を通り抜けます。
これは、朝日や夕日が赤く染まるのと同じ理由です。
さらに、大気はレンズのように働き、太陽光を屈折させて地球の本影の内側へ送り込みます。(下図参照)。
この微かな赤い光が、皆既中の本来見えないはずの月の表面を照らし、月は暗い赤銅色に染まって見えるのです。
この幻想的な赤い月は「ブラッドムーン」とも呼ばれます。
さらに、火山の噴火などで大気中にチリが多いときには、暗い赤銅色に見え、逆にチリが少ないときには、
明るいオレンジ色のような赤色に見えます。さて、9/8の月はどんな色に見えるでしょうか。

 ≪さらに目指すは「ターコイズフリンジ」≫

しかし、皆既月食の魅力はそれだけではありません。月が欠け始めると、その境目に沿って繊細な色の変化が見られることがあります。
これは、望遠鏡や双眼鏡でじっくりと観察するか、写真撮影をしてようやく確認できるほどの非常に微妙な現象です。
欠けた部分の境目がブルーがかって見えることがあり、これは「ターコイズフリンジ(トルコ石色の縁)」と呼ばれます。
この現象には、地球のオゾン層が関係していると考えられています。

下の写真は、天文クラブ員が2022年の皆既月食の様子を10分ごとに撮影したものです。

月食の日の月を10分ごとに撮影しました。
 

皆既月食でこのターコイズフリンジに出会えたら、きっと感動的な体験となるでしょう!

という事で、この貴重な機会を逃さず、9/8の未明に、一緒に皆既月食の観察をしませんか?
観察会へのご参加希望の方は、ホテルへお申込みの際に、その旨を伝えてください。
早朝の観測となりますが、この貴重な天文現象をぜひぜひ一緒に体験しましょう。