6月7月の観望会は、チラシのようになります。日程表はこちらを参考にしてください。 
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さあ、6月がやってきました。

6月の二十四節気(1年を24等分し、約15日ごとの季節を表す言葉を定めたもの)は、
まず6/5の芒種。これは、稲などの種を蒔く時期という意味。「芒種」の芒は音読みで芒(すすき)だった。
そう、稲などの穀物の穂は、ふさふさとぼうぼうとしている。その様子が芒らしい。
6/10は入梅。入梅は二十四節気ではないが、雑節といい、二十四節気の季節感をさらに補填するような
季節を彩る言葉。これは実際の天気とは関係なく、あくまで暦上のことばであり、数字としては、太陽黄経80°
としているので、太陽黄経90°としている夏至のおよそ10日前とされる。
そして6/21は、夏至。一年で一番昼が長い、そして一番夜の短い日。

と言う風に、星空の案内人としては、雨が多かったり、夜が短かったりで、あまり好ましからぬ季節では
あるけれど。でも、ものは考えよう。
ふと雨があがったそのいっときに、思わぬ美しい星空に巡り合うことがあります。
雨のあとの空は、チリが流されていてとても澄み、まさに空の彼方を見渡せます。

春を代表する北斗七星は勢いよく空を駆け巡り、南の空には、そろそろ夏のさそり座やへびつかい座が登場
してきています。また、東の空には、夏の風物詩、織姫星と彦星の「夏の大三角」が姿を現しています。
条件がよければ、さそり座、いて座のあたりから立ち昇り、夏の大三角を通り、北の空のカシオペヤに至る
天の川にも出会えるかも。
さあ、天の川の季節がやってきました。

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さて、最近の天文の話題はというと、今、かんむり座のΤ(タウ)星が注目を浴びています。
近々、新星爆発を起こすのではと期待されているからです。

「ああ、オリオン座のンベテルギウスでも話題だった星の爆発ね、」と思われる方もいるでしょう。
でも、ベテルギウスは「超新星爆発」、Τ星は「新星爆発」。この二つはよく似た名前を持っていますが
別物です。


≪「超新星爆発」と「新星爆発」が別物という話≫

「超新星」とは、急激に明るさが増して太陽の10億倍以上もの光度になる星を言います。
その出現頻度は、ひとつの銀河内で数十年に一回と言われています。
この超新星には、Ⅰ型とⅡ型があり、ベテルギウスで話題となったのはⅡ型。

重い恒星(太陽質量の10倍以上)ではその進化の最終段階で中心に鉄ができます。鉄は原子核エネルギーを
生み出すことができないので、みずからの質量を支えきれずに重力崩壊して星全体が吹き飛びます。
この現象をⅡ型超新星(爆発)と言います。星は吹き飛び、星の中心は中性子星あるいはブラックホールが
形成されます。

これに対し、Ⅰa型と呼ばれる超新星は、連星系をなす白色矮星に他方の星から流入した物質が降り積り、
ある限界を超えると、暴走的に核反応が発生し、白色矮星自体が吹き飛んでしまう現象です。

これに対して、「新星」とは、極めて暗い恒星が急激に明るくなったものを言います。まるで新しい星が
出現したように見えることからそう呼ばれます。その暗い状態から数千倍から数万倍明るくなると言いますが、
それでも超新星の「太陽の10億倍」よりは穏やかなものと言えそうです。
天の川銀河では1年に数十個の新星が観測されています。新星のしくみは、やはり、白色矮星と恒星が連星に
なっている系で発生します。連星の間隔が小さいと、恒星から白色矮星にガスが流入し、ガスが白色矮星の
表面に降り積もります。これが限界を超えると、核融合反応が暴走し爆発に至ります。その結果、暗かった
星が突然明るく輝きます。

という事は、Ⅰa型の超新星と、この新星、ともに、白色矮星と恒星との連星系でおこり、恒星のガスが
白色矮星の表面に降り積もった結果起こるのだから、同じメカニズムではないか、と思います。
確かに、そこだけ聞くと同じようなものなのですが、決定的に違うのは、超新星の場合は、一度起きると、
星全体が吹き飛んでしまうので、一回こっきりです。だから、頻度も極めてまれで、一つの銀河で数十年に
一回です。
しかし、新星は、吹き飛ぶのは白色矮星の表面だけです。表面が吹き飛び、その後、また、恒星のガスが
白色矮星に降り積もり、ある程度積もると核融合反応を起こす、というふうに、これは繰り返されるのです。
繰り返す周期は、数千年から数十万年と長いものから、数十年以下のものもあり、そうした間隔の短いものは、
再帰新星などと呼ばれます。


≪かんむり座のΤ星≫

地球から約3000光年先にあるかんむり座の方向にある白色矮星と赤色巨星の連星系。
約80年の周期で新星爆発を起こす再帰新星。
これまで、1866年と1946年の2回、爆発が観測されており、いずれも、爆発の時は2等程度の明るさに
なりました。平常の光度は10等程度です。という観測結果から、約80年周期で爆発する再帰新星と見られ、
次回の爆発は2026年ごろと考えられてきました。
しかし、2015年くらいから光度が0.5等ほど明るくなり、2023年2月ごろから徐々に高度を落としました。
この減光現象は、前回のときにもみられた傾向で、前回と同じような経過をたどっていることからら、
2024年2月から9月の間で新星爆発が起こるのではないかと予測されています。

実際に新星爆発が起こるときの経過は、前回を参考に予想しますと、
爆発直前   10.4等
爆発1日後   6等
爆発2日後   3等
爆発4日後 極大2等
爆発6日後   3等
爆発8日後   4等

というスピードで爆発後は減光するので、2等級で輝く極大期は1~2日程度のようです。
これは、かんむり座に異変があるとの情報があれば、大至急で観測しないといけません。
再帰新星は10個ほどありますが、2等まで明るくなるのはこのかんむり座Τ星のみです。
そして、次回は80年後です。ぜひぜひ、みのがすことなく、この新星の存在をこの目で確認したいものです。


      

    かんむり座はどこにある?  Stella Navigater より

≪夜空のどこを見る?≫

さて、この様に新星爆発とは何?ってことを一応理解したうえで、さて、夜空のどこにそれはあるのか?
が重要な問題です。

まずは、北の空を見上げて、北斗七星を探しましょう。ひしゃくの形をした北斗七星はおそらく、
見つけられるはず。この七星の手のカーブをそのまま延ばします。そこには、オレンジ色の明るい0等星が
見つけられます。この星は、うしかい座のアルクトゥールス。また、東の空へ昇ってくる夏の大三角を
形作るベガ(織姫星)も0等星で明るい星なので見つけられます。アルクトゥールスとベガを結び、
中央よりアルクツールス寄りに、冠の形をした半円形の小さな星座。それがかんむり座です。
その主星アルフェッカは2等星、あとは4等星5等星なので、おそらく市街地ではアルフェッカが
見られる程度でしょうが、この辺りに、あれ?もう一つ2等星が見える!と思ったら、それがきっと
この新星爆発した星Τ星です。かんむり座のなかの位置は、上図の青い点の位置、及び星マークの位置です。
かんむり座の半円を形作っている星ではありません。


ベテルギウスの超新星は難しいかもしれないけど、このかんむり座Τ星の新星爆発は、相当な確率で
みられるものと思います。80年に一度のこの好機をみのがすことなく、楽しめたら感動ものですね。
情報が流れてきたらすぐに自分の目で確かめましょう。
見られる時期はとてもとても短いので!

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